投稿者: anzen-kaigo 一覧

  • 12/30
    2024
    2024.12.30
    原因不明の骨折のトラブルの後に顔面に原因不明の内出血、家族が市と警察に通報

    《検討事例》                   ≫[関連資料・動画はこちらから] 
    Hさん(女性89歳・要介護5)は、自発動作が乏しい重度の認知症の利用者で、半年前に特別養護老人ホームに入所しました。ある時Hさんの娘さんが、面会時に拘縮のある左上腕に腫れを発見し、看護師に報告しました。看護師が嘱託医に連絡すると「上腕骨骨折の可能性があるので受診するようにと指示がありました。
    看護師が家族を一緒に整形外科を受診すると、左上腕骨螺旋骨折と診断されました。娘さんは、「動けない母が自分で骨折する訳がない。職員が介助中に骨折させたのだろう」と訴えます。相談員はHさんの介助に当たった職員に事情を聴きましたが、誰も心当たりがないと言います。相談員が「職員に聞き取り調査をしたが分からない」と報告すると、娘さんは「そんな調査で分かる訳がない」と更なる調査を要求します。
    結局原因は判明せず納得の行く説明もなく、1か月後にHさんの骨折の治療が終わり退院して再入所しました。ところが、退院して再入所した3日後に、面会に来た娘さんがHさんの顔を見ると、左眉の上が大きく腫れて赤く内出血しています。娘さんは介護主任を呼び「どこにぶつけたの?」と問いただしましたが、「先ほど定時のオムツ交換でパッドを交換しましたが、ぶつけることは無いと思います」と言います。娘さんは、電話で市に虐待通報した後、警察に行き「何度も虐待が起きているから調べて欲しい」と訴えました。その後2ヶ月も役所や警察への対応を余儀なくされ、専門家のアドバイスのもとに調査報告書を提出して虐待認定を免れました。

    《事例検討解説》
    ■原因不明の傷・アザ・骨折を防げるか?
     どんなに注意しても傷やアザは付きますし、どんなにていねいに介助しても寝たきりの利用者の骨折は防げません。ていねいに介助することはもちろん大切ですが、このようなトラブルになりやすい事故については、家族対応の備えをしておかなければなりません。本事例の対応のどこに問題があるのでしょうか?
     まず原因不明の骨折が発見された時、職員の聞き取り調査をして「分からない」と報告しています。娘さんの言う通り聞き取り調査だけで原因が分かる訳がありません。では、どのような調査をして回答したら良いのでしょうか?また、骨折の場合は傷やアザと異なり治療費などの金銭的な損害が発生します。この損害は家族と施設のどちらが負担したら良いのでしょうか?
     次に顔面の内出血の原因を尋ねられた時に、「介助中にぶつけることは無いと思います」といい加減な安易な対応をしています。自発動作が乏しい重度の利用者がどうやって自分で顔にアザを付けるのでしょうか?こんな責任逃れのいい加減な対応では腹を立てるのも無理がありません。
     このような虐待の疑いにつながる原因不明の傷・アザ・骨折に対しては、あらかじめ家族対応をマニュアル化してトラブルを防がなくてはなりません。私たちが作っているマニュアルのポイントをご紹介しましょう。

    ■原因不明の骨折への対応
     自発動作が乏しい利用者の場合、原因不明の骨折が判明したら最初に治療費負担についての説明を行わなければなりません。本事例の治療費はどちらが負担すべきなのでしょうか?全く自発動作が無ければ娘さんの言う通り、自発動作によって骨折する可能性はゼロですから、介助中の事故とみなされ施設の過失になります。裁判になっても答えは同じです。ですから、施設長が病院に急行して賠償責任について説明し、すぐに保険会社の了解を得ておきます。
     次に、骨折の原因を調査し報告することを家族に伝え原因調査を行います。この時重要なことは、医師に骨折の種類(骨の折れ方)を聞いておくことです。骨折の種類は「断裂骨折」「螺旋骨折」「粉砕骨折」の3つに分かれ、外力のかかり方が違います。断裂骨折は強い圧迫、螺旋骨折は捻じれ、粉砕骨折は他物との衝突によって起きますから、原因調査には大きな手掛かりになるのです。
     次に受傷時間帯を調べます。前の晩20時の就寝介助時に異常が無かったことが確認されていれば、その時間から骨折発見時までに受傷したことは確実です。本事例であれば、この受傷時間帯の介助場面で捻じれて骨折するような介助場面を検証すれば良いのです。介助場面の検証は、介助方法を再現してビデオに撮影しておきます。本事例の骨折は「更衣の介助時に無理な着せ方をした場面」と「車椅子移動で腕がブランと車椅子の外に出ていた場面」のどちらかが骨折の原因であると報告しました。

    ■原因不明の傷・アザへの対応
     原因不明の傷・アザが発見されたら看護師に報告し処置をしてもらいますが、看護師は処置の前にデジカメで患部を撮影します。受傷場面の推定が難しいような傷・アザの場合、後で整形外科の医師に診てもらうためです。
     次に骨折同様に受傷時間帯を推定して介助場面をリストアップして、受傷の可能性の高い介助場面を検証します。この時役立つのが「他物との接触状況の推定表」です。どんなものに接触するとどんな傷やアザができるのかを示した表です。例えば、浅く広い擦過傷はザラザラしたものに擦れたために、皮膚が広く細かく傷付いてできますし、広くぼんやりした内出血のアザは丸みのあるものに衝突してできた内出血で、皮下の深い部分が出血してできます。
     最後に、受傷の可能性の高い介助場面で接触した他物を推定して報告します。もちろん、「足を守るためのフットレストカバーを付ける」など、受傷事故の再発防止策も説明します。本事例では、オムツ交換で体位を交換する場面でベッド柵にぶつけた可能性が高かったため、「オムツ交換は必ずベッド柵を外して行うことを徹底しました」と説明してご納得いただきました。

    ■虐待を疑われた時の対応
     家族に虐待を疑われた時や、市に虐待通報された時には、虐待による受傷について検証しなければなりません。
    1.重大なクレームとして管理者が受け付ける
    2.管理者自ら調査を行う
    ・「虐待の疑いというクレームが発生したので調査を行う」とを職員に伝える
    ・「他の利用者の身体に同じような傷がないか」を調査する
    ・日頃の介助の状況について主任にヒヤリングを行う
    3.調査の結果を踏まえて虐待の可能性を管理者が判断する
    ・他の利用者に傷は無く不審な点が無い場合➡「虐待は無い」と判断
    ・他の利用者に同じ傷が発見された場合➡「虐待の可能性が高い」と判断
    4.調査の結果を申立者に説明する
    【虐待は無いと判断した場合】
    ・管理者として最終的に虐待は無いと判断したと説明する
    ・公的な苦情申立機関を説明する
    【虐待の可能性が高いと判断した場合】
    ・管理者として最終的に虐待の可能性が高いと判断したと説明する
    ・「市と警察に相談しながら、事実の解明を進める」と伝える
     虐待については上記のような対応になりますが、調査報告書では次の5項目すべての可能性を検証します。
    1.故意に傷つける目的で暴行し受傷させた(虐待)
    2.虐待の意図はなく乱暴な介助によって受傷させた(不適切なケア)
    3.危険な介助方法で介助して受傷させた(ルール違反など)
    4.介助中の介助ミスによって受傷させた(ミスによる事故)
    5.介助中の不可抗力的な偶発事故で受傷させた(不可抗力の事故)
     このように、虐待のクレームや虐待通報になると大変な労力がかかりますから、虐待を疑われないような適切な家族対応が必要なのです。

  • 12/30
    2024
    2024.12.30
    監査で「身体拘束」と指摘され利用者のY字ベルトを外したら車椅子から転落

    《検討事例》                   ≫[関連資料・動画はこちらから] 
     Rさん(72歳・女性)は、脳血管障害による下半身麻痺がある要介護3の在宅の利用者です。月1~2回程体度ショートステイを利用しています。Rさんは軽度の体幹機能障害があり、車椅子移動の時に左右に上半身が傾き、車椅子から落ちそうになります。Rさんのご主人は、医師に相談しY字ベルトを購入してRさんに装着し、認知症が無いRさんも「ベルトをしていれば安心」と言います。
     ところが、Rさんがショートステイを利用した時に役所の監査が入り、監査担当者が「Y字ベルトは明らかな身体拘束、すぐに外しなさい」と職員に厳しく指導しました。職員は「利用者本人が了解しており家でもベルトをしている」と反論しましたが、「在宅は良いが施設はダメだ」と言われました。仕方なくRさんのY字ベルトを外して、ご主人に電話で了解を求めました。ところが、ご主人は、「車椅子から落ちたらどうするんだ」と言ってすぐに施設に駆けつけてきました。ご主人が到着する少し前にRさんは車椅子から転落し、ご主人は施設長に「誰が責任を取るんだ」と抗議してきました。

    《事例検討解説》
    ■この利用者のY字ベルトは身体拘束か?
     身体拘束とは「ベルトや帯などを使って一時的に介護を受ける高齢者等の身体を拘束したり、運動することを抑制する等、行動を制限すること」とされています。このような物理的な強制力によって行動を制限する他にも、言葉で脅したりベッドを高くして「怖くて降りられない」ようにするなど、精神的に圧力をかけて行動を制限することも含まれます。
     さて、では体幹障害によって車椅子上での体幹維持が難しいRさんの上半身をY字ベルトで支えることは、身体拘束に該当するのでしょうか?私たちは、身体拘束については次の2つのポイントでその是非を判断しています。
    1.その身体拘束によって、利用者はどのような行動をどの程度制限されているのか?
    2.行動を制限されているとしたら、行動制限によって得られる安全などの利益と身体拘束によって発生する弊害のどちらが大きいか?
     例えば、多くの入所施設ではエレベーターにセキュリティを付けて、認知症の利用者がフロアから出られないように行動制限をしています。しかし、これらの行動制限を身体拘束と言って問題にする人はいません。なぜなら、フロアに閉じ込められても閉塞感は感じませんし、行方不明の防止のメリットの方が大きいからなのです。身体拘束を外見だけで判断する人が多いのですが、重要なことはその人にとって利益を弊害のどちらが大きいのかをキチンと判断することです。
    このように考えればRさんは、下半身麻痺で車椅子から立ち上がる身体機能がありませんから、Y字ベルトを付けても何ら行動制限にはなりません。また、仮に何らかの行動を制限されているとしても、車椅子からの転落防止などの体幹の維持によるメリットのほうが、弊害をよりも大きいのは明らかです。ですから、身体拘束にも該当しませんしY字ベルトを外す必要も無かったのです。

    ■身体拘束でないことをどのように説明したら良いか?
    役所の監査担当者はショートステイの利用者の身体機能の状態まで把握していませんから、車椅子のY字ベルトを見れば外見だけで判断して「身体拘束である」と考えるかもしれません。しかし、Rさんは立ち上がる身体機能が無く、行動制限をされていませんし、Y字ベルトが無ければ転落の危険もありますから身体拘束の指摘は間違っています。
    このように、一見身体拘束に見えても、生活行為に必要な姿勢を保持するための用具は福祉用具に該当します。介護保険施設でY字ベルトをしているとすぐに身体拘束と思われますが、身体障害者施設に行けばRさんのような利用者はたくさんいるのです。では、施設はどのように監査担当者に対応すれば良いのでしょうか?
    まず、利用者の身体機能と生活状況をきちんと説明して、Y字ベルトによる行動制限が無いこと、Y字ベルトが生活維持に必要な福祉用具であることを説明しなければなりません。場合によっては、Rさんのかかりつけ医に意見書を書いてもらうという手段も考えられます。
    3年前の身体拘束廃止の規制強化以来、身体拘束でないものまで「身体拘束である」と指摘されている施設がたくさんありますが、いずれも身体拘束の本質が役所に説明できていません。役所の指摘を鵜呑みにせず、利用者の生活を中心にきちんと説明しなければなりません。ただし、本事例について一言言わせていただければ、Y字ベルトは見た目が悪いですからひざ掛けなどで覆って、目立たないようにするくらいの配慮はあっても良かったと思います。

  • 12/30
    2024
    2024.12.30
    パワハラ防止法対策で相談窓口を設置したが職員からクレームが殺到

    《検討事例》                   ≫[関連資料・動画はこちらから] 
    S社会福祉法人では、4月にパワハラ相談窓口を設置しサービス向上課のM課長が担当者となり、職員に周知する文書を配布しました。すると早速、A特養のBさんから相談の申し込みがあり、課長が相談室で話を聞くことになりました。
    課長は「あなたはA特養のBさんね、どんな相談なの?」と言って、受付表に氏名を記入しました。Bさんは「上司から暴言を吐かれました。パワハラだと思うので注意してもらえませんか?」と言います。M課長が「どんな暴言なの?」と聞くと「私の口からは言えません、私が言ったって上司にバレちゃいます」と言います。「でも、本人に注意するにはどんなパワハラか分からなければ注意しようがないでしょ」と課長が言うと、「もういいです」と言って帰ってしまいました。後日Bさんから「匿名も可というから相談に行ったのに名前を書かれた、信用できない」と、総務部長にクレームが入りました。
    しばらくすると、CデイサービスのD職員が相談に来ました。D職員は「所長が利用者を増やすためにチラシを配布しろと強要します。パワハラですから止めさせてください」と言います。課長は「所長には止めるように指導します。あなたの名前は出さないようにするわね」と言って、すぐに所長に止めるよう指示しました。今度は、所長が「それはパワハラではない、Mさんは勉強不足だ」と異議を唱えてきました。
    《事例検討解説》
    ■トラブルが頻発した原因は何か?
     S社会福祉法人のパワハラ相談窓口の対応はなぜ最初からトラブルになってしまったのでしょういか?M課長の対応を検証してみましょう。
     まず、パワハラ相談窓口を「匿名可」にする必要はありませんが、幅広く相談に対応するためには、「匿名可」が望ましいでしょう。しかし、相談方法を「匿名可」としている場合は、相談者の氏名が判っていてもいきなり受付表に氏名を記入してはいけません。
    「匿名可」の場合は、相談を開始する前に次のように確認します。「あなたの名前をお聞きしても良いですか?匿名希望の場合この受付表の氏名欄を空欄にしておくこともできます。氏名を記載しても、社内で公表したり、上司にあなたの氏名を告げることはありませんが、どちらにされますか?」と。ただし、匿名の相談の場合は相談窓口の相談だけに留まり、正式にパワハラ事案として会社が是正対応に乗り出すことはできませんから、そのことも説明が必要です。
     次に、デイサービスの職員への対応では相談者のパワハラ主張を真に受けて、いきなり是正対応を始めていますが、これは間違いです。パワハラ窓口の相談から是正対応への手順をきちんと決めておかなければなりません。是正対応に移るまでに確認すべきことがたくさんあります。パワハラ行為の要件の確認、行為の事実確認、被害と救済方法の確認、是正対応方法の本人への確認などです。
     ちなみにD職員は「チラシ配布は自分の業務ではないから業務の逸脱である=パワハラ行為である」と勝手に判断していますが、業務の逸脱は3要件の一つですからこれだけではパワハラ行為には該当しません。また、介護職員に利用者拡大のためのチラシ配布を業務として命令することは、会社の裁量権の範囲内ですから業務の逸脱でもありません。最近では「自分の気に入らない業務命令をパワハラである」と主張する職員が増えていますから、「パワハラには該当しない」という明確な根拠も説明しなければなりません。
     このように、細かい対応手順が決められないまま相談業務を始めると、M課長のようにトラブルを一身に抱え込むことになってしまいます。では、相談窓口の対応方法や相談以降の会社の是正対応はどのように決めたら良いのでしょうか?

    ■職員のパワハラ相談への対応とは?
     実はパワハラ相談窓口の対応方法はそれほど簡単ではありません。相談後の会社の是正対応とも連動しなければなりませんから、あらかじめ会社の対応の流れを決めておく必要がありますし、相談者への説明も必要です。社内の対応の流れはだいたい次のようなものです。
    ①パワハラ被害を訴える相談者の主張内容の確認
    ➡行為者がどのような言動をしたのかを具体的に聞き取り記録します
    ②訴えがあった行為がパワハラに該当するかの評価
    ➡法律で定められた3要件に該当するか検証して行為を評価します
    ③要件に該当しない場合はパワハラ事案として取り上げないことを相談者に説明します
    ➡要件に該当しない場合でもコンプラ上問題があれば会社が独自に対応します
    ④パワハラの要件に該当した場合の事実確認
    ➡要件に該当した場合、行為を行った本人や周囲の職員に事実を確認します
    ⑤パワハラ行為と認定した場合の会社の対応方法を被害者に確認する
    ➡被害の救済、行為の是正方法などについて被害者に確認して会社の対応を決めます
    ⑥懲戒処分が必要な場合は会社が独自の裁量で処分を行います
     ➡「処罰して欲しい」と訴える被害者もいますが、懲戒は会社の規定に沿って行われ、被害者の要求には従えません
     
    以上のようなパワハラ行為に対する会社の対応手順を踏まえて、相談窓口ではどのような点に注意すれば良いのでしょうか?私たちが作成した「パワハラ相談窓口対応マニュアル」から、一部をご紹介しましょう。
    1.相談窓口対応の趣旨説明
     相談窓口に来る職員は「パワハラかもしれない」と相談するだけの人から、確信を持ってパワハラ行為の被害救済を訴える人まで様々です。広く相談に応じるためには、相談窓口の趣旨を説明し、パワハラに該当した場合の会社の対応方法も説明します。
    2.相談者の氏名の確認
    匿名の場合は会社の記録に氏名が残りませんが、匿名のままでは是正対応にも限度があることを説明します。
    3.パワハラ行為者への調査について説明
     たとえ訴えの内容がパワハラ行為に該当しても、相談者の許可なくパワハラ行為者への調査を行わないことを説明します。
    4.訴えを具体的に確認する
     相手の訴えが「暴言を吐いた」「暴力的な振舞いをする」など表現があいまいな場合は、どのような言葉を言ったのか、どのような行為をしたのかを確認します。
    5.相談者はなぜパワハラ行為と考えたのか確認する
    相談者がパワハラ行為の要件を正確に知っている訳ではありませんから、パワハラの指摘が間違いかもしれません。どのような行為をパワハラ行為と考えたのかを尋ねます。
    6.相談者の要望を確認する
    相談者が現在受けているハラスメントに対して、どのような対応を望んでいるのかを確認します。なるべく穏便に済ませたいと考える相談者に対しては、会社の厳正な対応を強制しないようにします。
    7.相談者の健康被害の確認
    パワハラで発生する被害はそのほとんどがメンタルの不調で、身体に様々な変化が現れますから、具体的に例示して被害の有無を確認します。健康被害の回復が最優先であることを説明します。
    8.会社の是正対応(匿名の場合と氏名を記録した場合の対応)
    相談者の氏名を匿名とした場合、会社は正式に事案として取り上げることができませんから、調査や是正措置が難しくなりますので、このことを説明しておきます。
     
    これがマニュアルの全てではありませんが、相談窓口の対応が難しいことはお分かりいただけたと思います。本事例のように「法律への対応上必要だから」と窓口を設置して、対応は担当者に丸投げしてしまった法人が多いですから、担当者が困らないように細部をマニュアル化してあげてください。

  • 12/30
    2024
    2024.12.30
    職員のすぐそばで突然立ち上がり転倒、「見守りを怠った職員の過失」と主張する家族

    《検討事例》                   ≫[関連資料・動画はこちらから] 
    ショートステイを継続的に利用しているMさん(88歳・女性)は、立位の保持はできませんが、立ち上がることができます。認知症が重度で車椅子上で急に立ち上がることがあるので、職員がそばで見守りをしています。
     ある日の午後、Mさんはデイルームの車椅子上で居眠りをしていました。職員はMさんのそばで介護記録を記入しながら、Mさんを視界に入れて見守りをしていました。その時Mさんがいきなり立ち上がり一歩も足を踏み出さずに、両足をそろえたまま前方に頭から転倒しました。職員は視界の中でMさんが動いたことに気づきましたが、顔を上げてMさんのほうを見た時には、すでに転倒していました。
     Mさんが額を強く床に打ち付けたため意識不明となり、救急搬送されましたが意識は戻らず2週間後に病院で亡くなりました。転倒事故発生時の説明にいったん家族は納得しましたが、1か月後に代理人の弁護士から内容証明郵便で、損賠賠償金の請求書が届きました。請求書には「介護職員がすぐそばに居たのであるから、十分に注意していれば事故は容易に防げたのであり、注意を怠ったことに過失がある」として、「賠償金として4,000万円を請求する」とありました。施設では過失を認めましたが、保険会社は賠償金額が高額であるとして裁判で争う構えです。
    施設長は、「立ち上がりの行動がある認知症の利用者には、もっと注意して見守りをするように」と、職員に指導しました。

    《解説》
    ■職員が近くに居ても転倒は防げない
    本事例のように、職員がそばで見守りをしている時に、利用者が突然転倒し駆け寄ったが間に合わずに転倒させてしまう事故が、施設では頻繁に起こります。管理者は「そばで見守っているのだから注意していれば転倒は防げるはず」と考えているので、「もっと注意して見守りをすべき」と指導します。また、本事例のような賠償金を請求してくる弁護士も同様に、「介護職員がすぐそばに居たのであるから、十分に注意していれば事故は容易に防げたはず」と決めつけます。事故が裁判になった場合の裁判官の判断もほとんど同じです。
     しかし、そばに職員が居たからと言って、常時利用者に顔を向けてじっと見守っていることはありませんから、近くに居たからと言って転倒が防げるはずがありません。また、仮に職員が利用者を注視している時に転倒事故が起こったとしても、すぐに駆け寄って利用者を支えることができるかも疑問です。このように、利用者の近くに職員が居るような場面で転倒が起こっても、現実に防げるケースはわずかなのです。
    ところが、「介護職員がすぐそばに居たのであるから、十分に注意していれば事故は容易に防げたはず」と主張されると、施設も過失を認めてしまいますし保険会社も仕方なく保険金を支払ってしまいます。介護現場の状況をよく考えてみてください。介護職員はプールの監視員とは異なり常時利用者が転倒しないように注視している訳ではありませんから、何の予兆もなくいきなり転倒する利用者を駆け寄って支えるなどということは不可能なのです。
    ■科学的な根拠が無いから無過失を主張できない
     さて、前述のように防げる確率が低い事故なのに、安易に過失と認定されてしまうのは、なぜでしょう?理由は、職員が近くに居るとどれくらい転倒が防げるかの科学的実証データがないことです。弁護士や裁判官のみならず、介護の現場でも「転倒事故は注意して見守っていれば防げる」と管理者や職員自身も考えていますから、過失と認定されても誰も異議を唱えません。
     しかし、「転倒防止のためにもっと注意して見守りなさい」という現場の指導のせいで、介護職員は大変大きな負担を強いられている現状があります。また、「立ち上がるから転倒する、立ち上がらないように座っておいてもらおう」などと考える職員もいますから、身体拘束の問題にもつながるのです。
     では、「職員がそばに居ても転倒は防げない」という科学的実証データがあったら、賠償請求や訴訟のみならず、現場での転倒防止対策の考え方も変わるのではないでしょうか?「この利用者の転倒事故は防止確率が10%とほとんど防げないのだから、転倒した時骨折しないような対策も考えよう」とならないでしょうか?
     さて、弊社(株式会社安全な介護)では、職員がそばに居て利用者が転倒した場合、どれくらいの確率で転倒事故が防げるのか、実証実験を行い転倒防止確率が低いことを科学的実証データとして確認しました。実証実験のデータを一部ご紹介します。
     今後は裁判や現場の事故防止活動においても、これらの科学的実証データを活用して、合理的な過失判断を行うとともに、現場の転倒防止活動の見直しをしていただきたいと思います。
    ■転倒防止可能性実証実験の結果は?
    ≫実証実験の結果 

  • 12/29
    2024
    2024.12.29
    2/7安全な介護塾「リスクマネジメント委員会の新しい運営方法」

    施設や法人のリスクマネジメント委員会って何をやったら良いのでしょう?現場の事故防止活動変革のために、リスクマネジメント委員会を変えてみませんか?≫案内はこちら

  • 12/29
    2024
    2024.12.29
    2/3オンラインセミナー「職員不祥事防止とコンプライアンス管理」

    コンプライアンスとは何か?どのように職員の不正行為や不適切言動を防止すれば良いのか?施設・事業所管理者必見!≫案内はこちら

  • 12/24
    2024
    2024.12.24
    2月事故事例検討会「ショートでノロ発生、直後に退所した利用者が救急搬送」

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  • 12/22
    2024
    2024.12.22
    2月オンライン無料セミナー「15の事例から学ぶ誤えん事故の防止対策」

    誤えん事故は防げない事故が多く、死亡事故になると賠償トラブルも発生しやすい厄介な事故です。誤えん防止対策と家族トラブル対策を事例で解説します。≫セミナー案内 ≫15の事故事例

  • 12/13
    2024
    2024.12.13
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  • 12/12
    2024
    2024.12.12
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    新作動画「みんなで取り組む虐待事故防止活動」を、2月1日より1ケ月間無料配信いたします。施設・事業所でお申し込みください。
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